場の医学と野口療法

  

ストレスの種類と内臓の病気

2018年 2月24日

内臓の病気と情動

場の医学

 慢性的な精神的ストレスは慢性炎症を招きますが、その多くが内臓の病気です。
 情動の影響を受けやすいのは消化器系ですが、情動の種類によって臓器の受ける影響が違います。具体的に見てみましょう。

 脳は強い緊張型ストレスが続くと脳こうそくや脳出血を招く危険性があります。
 また、弛緩(しかん)型ストレスが続くと認知症やアルツハイマーなどになる危険性が生じます。
 大脳をあまり使わない人は脳の老化が速く、とりわけ前頭葉(特に前頭前野)の老化が顕著です。
 前頭葉は感情をコントロールする部位でもあるので、前頭葉が老化すると感情のコントロールができなくなります。
 例えば、年をとると怒りっぽくなったり、凶暴になる老人は前頭葉の老化がかなり進んだ人です。
 一般に、年をとると涙もろくなりますが、これも前頭葉が衰えてきたからです。

 怒りや不安などが続くと胃炎や胃かいようになる危険性が高くなります。
 血流障害による免疫力低下が続けば、ピロリ菌による悪い影響が現れる危険性が増えます。
 そして、強い慢性ストレスが続くと胃がんに発展する危険性が強くなります。
 一般に、胃病を招くのは交感神経過緊張状態が続く場合です。

大腸

 精神的疲労を招くストレスは、腸の働きを抑えます。そのため、食欲不振、下痢や軟便、不眠などの症状が出ることがあります。このような慢性ストレスが続くと、血流低下と免疫力低下により、大腸がんになる危険性が生じます。
 一般に、大腸の病気を招くのは交感神経過緊張状態の継続です。

肝臓

 肝臓は再生力のある強い臓器ですが、怒りに弱い臓器です。
 緊張ストレスは、交感神経過緊張を生じてエネルギーを多く消費するので、肝臓でブドウ糖産生を増やす一方、脂肪をため込む働きを抑制します。従って、緊張ストレスが続くと、脂肪を合成する機能が低下します。
 一方、弛緩(しかん)ストレスは、交感神経不活性(副交感神経過緊張)状態なので、エネルギー消費が少なく、エネルギーを貯め込む働きを促進します。一方で、肝臓の脂肪を分解する働きを抑制します。従って、弛緩ストレスが続くと、肝臓の脂肪を分解する機能が低下します。
 一般に、緊張ストレスの強い人は痩(や)せ体質の傾向があり、弛緩ストレスの強い人は太り体質の傾向があります。
 B型肝炎やC型肝炎などの発症の時期は、人によって大きく違います。その違いは、慢性ストレス(免疫力低下)が大きく影響していることが予想されます。
 また、酒を飲み過ぎると肝臓が腫(は)れますが、すぐに元に戻ります。ただ、慢性ストレスを抱えている人は、酒の影響を受けやすく、肝炎、肝硬変、肝臓がんに進む危険性があります。
 慢性ストレスがアルコールを求めるのかもしれませんが、飲み過ぎで肝臓がんになる人には繊細さを感じる場合が少なくありません(たくさんの人を見てきたわけではありません)。それが、慢性的な精神的ストレスを生じさせているように思います。
 肝臓の病気も交感神経過緊張状態の継続が大きいと考えて良いでしょう。副交感神経過緊張から脂肪肝を増やして肝硬変、肝臓がんへと移行する場合もあるかもしれません。

心臓

 心臓は、多くの臓器と連携しているので、様々な精神的ストレスの影響を受けます。
 怒り、憎しみ、恐怖、驚き、あるいは悲しみや不安などによる精神的ストレスが続くと、動悸(どうき)や息切れなどの症状が出ます。これらの症状は、ストレスによる血流障害により、心臓を流れる冠状動脈の流れが悪くなった結果と考えられます。不整脈から始まり、狭心症や心筋梗塞などに(年月をかけて)進行します。
 このような症状は、交感神経過緊張状態が継続した結果です。
 また、悩みなどによる副交感神経過緊張状態(交感神経不活性状態)も心臓を悪くする危険性があります。
 なお、腎臓が悪くなると心臓も悪くなる傾向があります。

気管支と肺

 落胆や心配事が続くと交感神経が不活性になり、気管支や肺の血流が悪くなります。そのため、炎症を起こして、咳、息切れなどを招きやすくなります。
 肺や気管支は、空気を通じて、外界と接触しているので、病原体に感染して炎症を起こしやすい臓器です。
 その原因である(肺や気管支の)血流障害(免疫力低下)を招く要因は、弛緩ストレスと冷えです。
 逆に、緊張していると呼吸器系には多くの血流が流れ(免疫力が上がり)、風邪などの病原体は繁殖しにくくなります

腎臓

 腎臓は非常にもろい臓器です。とりわけ精神的ストレスに弱く、また冷え(特に足の冷え)に弱い臓器でもあります。
 強い恐怖感や驚きがあると腎臓の血流が悪くなり(血流障害)、腎臓のろ過機能などが低下します。
 腎臓は体の調節機能などを担っている臓器なので、腎臓の働きが悪くなると体全体に影響を与えます
 医者は腎臓が悪くなると塩分やタンパク質などを控えめにするように指導しますが、彼らは腎臓が悪くなる理由を理解していません。繰り返しますが、私たちは、腎臓が慢性ストレスと足の冷え(共に血流障害)で悪くなることを理解する必要があります。
 腎臓は排毒作用、肝臓は解毒作用を担っているので、腎臓が悪くなると、肝臓も悪くなる傾向があります。

臓器の寿命

 一般に、臓器・腺には耐用寿命があることが考えられますので、器官は、使いすぎると障害の蓄積が増えて寿命に近づくはずです。従って、中年以降、激しい運動や無理はできるだけ控えた方が無難です。
 無理をせず、逆に休みすぎもせず、これが基本です。特に、副腎やすい臓などの分泌器官は確実に寿命があると考えられますので、使いすぎると衰えが早くなる可能性があります。
 免疫器官である胸腺の機能は70歳を過ぎると20歳頃の10分の一以下になります。
 肺や腎臓も年齢による機能低下が著しいのですが、個人差も大きい臓器です。
 一般に、70歳を過ぎると20歳頃に比べて、肺の機能は半分、腎臓の機能は6割位に低下する人が多いようです。

ストレスの種類と内臓病のまとめ

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病気のメカニズム

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 このように、病気の原因はストレスであり、その多くが精神的ストレスです。
 右図に示すように、心のしこりが慢性ストレスになり、それが血流障害を生み出して慢性炎症を発生させます。
 その状態が長年月化すると、内臓病、生活習慣病になっていきます。
 ところが、西洋医学はこのような病気の原因を無視して、患部の治療に特化するので生活習慣病はむろんのこと、内臓病に対しても非力なのです。
 ただ、慢性炎症が問題視されるようになってきましたので、やがて治療薬が見つかるかもしれません。

慢性炎症を鎮める薬

 現在でも、ステロイド(コルチゾール:副腎皮質ホルモンの一種)系は強い消炎作用を示すのでよく使われますが、消炎作用は免疫力を押さえる作用なので副作用が大きく、長期使用は大変危険です。
 昔、柳の木から分離されたサリチル酸は消炎作用(解熱鎮痛薬として利用)を示しましたが、胃腸障害を起こす副作用がありました。
 その副作用を少なくしたのが、ドイツのバイエル社が開発したアセチルサリチル酸です。これが有名なアスピリン(商品名)です。
 アスピリンは解熱鎮痛薬として世界中で使われていますが、それだけに薬害の多い薬でもあります。
 米国の薬害の三分の一はアスピリンです。日本では、バファリンがこの系統の薬になります。
 ただ、アスピリンは消炎作用を示すので、毎日少量(例えば10ミリグラム位)摂取する程度であれば、副作用を示すことなく慢性炎症を鎮める可能性があります

 初めて医薬品の名前を書きましたが、突然アスピリンを思い出したのです。何十年も前のことですが、アスピリンが健康に良いと勧められたことがありました。必ず飲めと強く勧められたのです。そのときは、全く興味も関心も無く、そんな危ない薬を勧めるなんてどうかしていると思った記憶があります。
 ところが、この欄を書いているときに、抗酸化作用だけでなく、むしろ抗炎症作用こそ必要な要素であると意識している中で、昔勧められたことを思い出したのです。
 その方はすでに亡くなられているので、勧められた根拠を聞けないのが残念ですが、近年米国でもアスピリンが注目されていることは事実です。
 それでも、鎮痛薬に対する強い拒否反応があるので、今の今まで大昔にアスピリンを勧められたことを思い出せませんでした。
 当然ですが、少量のアスピリンの長期服用が慢性炎症や生活習慣病に有効であるかどうか、また無害であるかどうか、私には分かりません。ただ、どうしようもなくなったときには、試してみる価値はあるかもしれません。
 また、今後アスピリンの健康に関する長期の調査結果が米国などから出てくる可能性はあります。

植物栄養素(ファイトケミカル)

 なお、私がお勧めしたいのは、体に有効な植物由来の物質である植物栄養素(ファイトケミカル)です。
 ファイトケミカルは、植物が紫外線、暑さ寒さ、有害物や外敵などから身を守るためにつくりだす様々な化学物質の総称ですが、人体の働きに役立つ物質も少なくありません。ここでは、植物が作る人体に有益なファイトケミカルを、特別に植物栄養素と呼んでいます。
 既に、有効で無害な消炎作用(抗炎症作用)を持つ植物栄養素(ファイトケミカル)が幾つか見つかっていますが、残念ながらあまり注目を集めていないようです。抗炎症作用の重要性が広く認識されていないからだろうと思います。
 しかし、やがて植物栄養素(ファイトケミカル)が(副作用の多い)従来の薬を駆逐する時代がくることを確信しています。

 次の項で、ストレスと生活習慣病について説明します。

トルーレイキ療法